オーディオ用CD-Rの追記の方法
 オーディオ用CD-Rのシステムで少し触れておかなければならないのは、追記の仕組みです。このシステムも、当然、一度記録した後に別のデータを追記できるようになっており、Red Bookの仕様では最大99トラック(=99曲)まで継ぎ書きをすることができます。

 ただし、オーディオ用CD-Rの再生はPCではなく、あくまでもCD-DAプレーヤ(一般的なオーディオCDプレーヤ)を前提としていますから、追記したディスクは完全にRed Bookの仕様に準拠していなければなりません。つまり、CDの目次情報であるTOC(Table Of Contents)は一ディスク一つでなければならず、PCにあるマルチセッション(言うなれば、一枚にいくつもTOCがあるようなディスクです)で継ぎ書きされたデータを読み出すことはできません。むしろ禁じられているというべきか、もしも複数のTOCを書き込めたとしても、通常のCD-DAプレーヤは最初のTOCのある領域しか読み出せないはずです。

 そこでオーディオ用CD-Rのシステムの追記については、以下のような工夫が講じられています。

CD-Rでは、通常のCDで規定されているディスクの最内周よりもさらに内側の、直径で言うと44.7ミリから46ミリの範囲に特別なエリアを設けていて、この部分をPCAとPMAと呼びます。

 PCAというのは「Power Calibration Area」の略で、OPC(Optimum Power Calibration)の際にレーザを当ててパワーの最適化に利用されます。

 もう一つのPMAとは「Program Mangement Area」で、追記時に必要となるアドレス情報が一時的に保管されます。

 仕組みはつぎのとおりです。



 まず追記をしない場合、一度記録したらつぎに書き込みしないという場合には、レコーディングしたあとに、最後に「ファイナライズ」といって、メディアの最内周にTOCを記録する処理を行います(他にもリードアウトという処理も行います)。データを書き終わり、最後に最内周のTOC(リードイン)を書き込みに行くというのは、オーディオ用CD-R/RWレコーダが、CD-R/RWドライブで言う「トラックアットワンス」ドライブ(=レコーダ)であることが理解いただけるでしょう。ですから、当然ながら書き込みの仕組みはCD-R/RWとほぼ同じ――というよりも、ともにOrange Book PartIIに準拠しているわけですから、ディスクもハードウエアも、PC用とオーディオ用は、基本的に同じでなければなりません。

 ちなみに、オーディオ用CD-R/RWレコーダがPC用のCD-R/RWドライブであるなら、4倍速(かそれ以上)の書き込み速度に対応しているのではないのかと考える方も、中にはいらっしゃるかもしれません。実際、オーディオ用CD-R/RWレコーダというのは、オーディオアプリケーションをCD-R/RWドライブ上に動作させているシステムだと見ることもできますから(ただし、コンデンサをはじめとしてさまざまな部分にオーディオ専用の高音質パーツが使われていることを忘れてはなりません)、潜在的には、高速書き込みに対応してないわけではないのですが、現在は2倍速書き込みまでとなっています。

 さて、このように「TOC(リードイン)→データ→リードアウト」という構造になっていれば、オーディオCD-R/RWレコーダで書き込まれたCD-RメディアはRed Book準拠になりますから一般のCD-DAプレーヤで再生できるようになります。

 一方で追記をする場合には、ファイナライズをせず、“プレリミナリ”と呼ばれる作業を実行します。このときに使われるのが先ほどのPMA領域です。

 「ファイナライズをしない」ということには二つの意味があります。

 一つは、当然ながら追記ができるということ。もう一つは、リードアウトもリードインもないのですから、これはRed Bookではない。すなわち、CD-DAと同じオーディオ信号が書き込まれているにもかかわらず、これはCD-DAディスクではないということです。

 後者の方から解説をすると、ファイナライズをしていないCD-Rは、通常のCD-DAプレーヤ再生することはできません。他のプレーヤでは再生できないのですが、ただ、記録中のオーディオCD-R/RWレコーダであれば再生可能――つまり、いわゆる自己録再はできるのです。ですから、メディアが一杯になるまで、お気に入りの曲をつぎつぎに記録していってベスト盤を作成するような、そういった使い方なら可能です。ディスクが一杯になれば、ファイナライズをしてRed Book互換のメディアとします。

 もう一つの、「追記ができる」ということがどういう意味なのかというと、「このメディアはここまで記録してあるので、継ぎ書きをする際にはそのつぎの場所から書き込みなさい」といったアドレス情報や曲数を持っているという意味で、このような状態のディスクは、「暫定TOC」もしくは「仮TOC」とも言える情報が書き込まれているのです。

 もうおわかりでしょうが、こういう作業を“プレリミナリ”と言い、書き込んでおく場所がPMAなのです。

 自己録再での“追記待機状態”において、ディスクにオーディオ信号を追記しようとするとき、レコーダの光ヘッドは最初にPMAに書き込まれている「暫定TOC」を読みに行って記録を実行します。ファイナライズをしていないのに自己録再ならば再生できるのは、レコーダがこの「暫定TOC」を読めるためです。

 記録を終了してもさらに「ファイナライズをしない」場合(=さらに追記をしたい場合)は、再びそのPMAに新たな「暫定TOC」を追記し、追記のたびにこの作業をくり返していきます(言うまでもなく、CD-Rですから暫定TOCでも書き換えはできません)。一見するとPCのマルチセッションに似ているのですが、違います。

 そして、もうこれ以上書き込みをしない、となればファイナライズ処理をします。すると、レコーダは「暫定TOC」を「正式TOC」に更新し、正規のTOCのエリアに書き込みます。ですから、追記をしたオーディオCD-Rには、厳密にはファイナライズ前の「暫定TOC」と「正式TOC」の二つのTOCを持っていることになるわけですが、一般のCD-DAプレーヤはこのPMAを認識できませんから(というよりもそういう領域があることは想定されていません)、ファイナライズ後、オーディオ用CD-Rディスクはまったく問題なく、ごく普通のRed BookのCD-DAとしてCDプレーヤで再生できるのです。