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前項では相変化の記録原理をごく大まかに説明しましたが、ここで少し気にとどめておきたいのは、「最適なレーザパワーとライトストラテジ」ということです。 ライトストラテジというのは、記録時におけるレーザパワーの制御のことを言い、記録原理もディスクの物性も異なっているわけですから、CD-RにはCD-Rの、CD-RWにはCD-RWの制御の方法があり、当然、両者は違います。まず、「EFM」という信号を中心に、CDにおけるデジタル記録の特徴について説明しておきたいと思います。 デジタル記録というと、通常は1と0を電気信号のオンとオフに変換して記録するもの、というわかりやすい説明がよくされます。 ところが、CDに刻まれている信号(ピットとランド)は、0と1を機械的に対応させたものではありません。もしも単純に対応させてしまうと、たとえば無音部分(0)が非常に長くつづくような場合、光ヘッドがトラッキングできなくなります。光ヘッドが自分の位置を見失ってしまうのです。 そこで0と1、したがってピットとランドをそれぞれ連続させないような特殊な変調方式が考案されました。これがEFM(8 to 14 Modulation)で、EFMとは、8ビットの信号を14ビットに変換してなおかつ1と0の数が平均的に出現するようにビットを付加する変調方式のことを言います。余談になりますが、日本語ではよく「EFM変調」とか「FM変調」(Frequency Modulation)という言い方をしますが、ここでの「M」には変調の意味が含まれていますから、これらの用法は厳密には誤りです(本書でも使用していますが)。 さて、ディスクに記録されるEFM信号は、「3T」から「11T」までの物理的な長さとスペースから成り立っています。本来、レーザのオン/オフはこのEFM信号に対応していればいいはずなのですが、昇温とクーリングを微妙に、かつ精密に制御していかなければならないCD-RWでは、“EFMのまま”レーザを当ててもうまく記録することはできません。そのまま記録してしまうと、本当であれば急冷の制御をしなければならないところが徐冷になってしまって、マークの形状やエッジにひずみが生じ、ジッタやデビエーションの低下を招いてしまうどころか、極端な場合、似ても似つかない信号になってしまうこともあります。 CDやDVD系の信号の正確さがピットとランドのエッジのシャープさ、というよりもむしろディスクにおけるエッジの位置によって決まるものであること。言い方を換えると、エッジの位置が正しくなければすぐに読み出しエラーとなってしまいます。 そしてこのエッジの正確さという点はCD-RWに固有のもので、同じ相変化記録であっても、たとえばPDとは大きく異なります。 PDの場合、ハードディスクと同じ「ピットポジション記録」ですから、エッジのシャープさよりも中心位置が重視されます。そのため、エッジの位置が多少ずれていたりぼけていても中心さえ正確に書き込めてさえいれば信号を正しく読み出せます。ところが、“エッジにこそ信号が書き込まれている”とも形容できるCD(-R/RW)は、PDと同じようなライトストラテジは採用できず、CD-R/RWの記録においては、エッジを急峻に仕上げ、かつ中心部はできるだけ凹凸がない書き込みが求められることになるのです。 下図はレーザパワーの制御(ライトストラテジ)の一例です(リコーのライトストラテジの例)。 すぐにお気づきになるように、そこにはいくつかのパルスの組み合わせでEFM信号が記録されています。これがCD-RW型のマルチパルス記録方式で、たとえば「4T」のEFM信号を記録する場合、初めに融点に至るレーザパワーを「1T」の間与えて急冷し、つづいて「0.5T→急冷→0.5T」を繰り返します。4Tでは合計3回、3Tでは2回というように、「nT」信号に対して「-1」、つまり「nT-1」のパルスを与えるのです。CD-Rの記録も、「nT-1」である点は同じですが、ライトストラテジは異なります(右ページの図の「参考」を参照)。 ![]() CD-RWの話題に戻って、最初に「1T」分の時間、レーザが照射されるのは相変化材が冷えているため融点に達するのに時間を要するからです。こうして結晶相をアモルファス相にし、つぎの瞬間にはレーザをオフにしてこのアモルファス状態を急冷しフリーズさせてしまいます。 なお、ここで示しているライトストラテジはほんの一例で、細部はドライブメーカ各社によって異なりますが、明確なのは、CD-Rと異なる、専用のライトストラテジでなければCD-RWの要求特性には応えられないということです。 ![]() |
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