相変化記録の原理
 まず、CD-RWの記録と再生の原理から説明することにしましょう。

 CD-RWのリライタブル機能が、MOに採用されている光磁気ではなく、PDやDVD-RAMと同じ相変化――英語ではその名のとおり、“Phase Change”(Phaseとは「相」とか「位相」の意味)という原理によって実現していることはたぶんご存じのはずだと思います。“相”の変化を応用して信号を記録するわけです。

 ちなみに辞書では相のことを「物質の系の中で、均一でかつ明確な境界を持ち、他と区別される領域」、「物質系の一部がその内部で物理的・化学的にまったく同一性質を示すとき、その部分が同じ相にあるという」と説明しています。

 それではいったい、相の変化とはいったいどういう現象なのでしょうか。

 CD-RWが、結晶質(クリスタル)と非結晶質(非晶質。アモルファス)の物理的転移を利用して信号を記録していることはご存じでしょう。アモルファスとは、最近よく耳にする用語ですが、これは結晶構造ではない物質状態という意味です。

 一部の合金には、固体であるにもかかわらず原子が液体状態の配列のまま、という性質を持ったものがあり、相変化記録とは、こういった特殊な合金の結晶・非晶双方への物理的転移をレーザによって引き起こし、一方再生時の際も、やはりレーザを使って両者の反射率の違いを読み出すという仕組みになっています。



 このクリスタルとアモルファスそれぞれを“相”と言い、このような特質を持った特殊な合金――すなわちこの場合はCD-RWの記録材料を、一般的には「相変化材料」と呼んでいます。CD-RWの相変化材料には、たとえばAg-In-Sb-Te(銀-インジウム-アンチモン-テルル)の四元素の合金があります。

 さて、具体的な書き込みと読み出しのメカニズムですが、相変化材料は、当初は結晶相の状態になっており、記録時はプリグルーブに沿い、ここに、EFM信号をレーザで照射していきます。

 記録の際に重要になるのは、(1)最適なレーザパワーとライトストラテジはもちろんですが、(2)として、どのようにクーリング(冷却)させるか、ということであり、実はこちらの方の比重も、CD-RWの記録の上ではたいへんに重いものになっているのです。CD-Rも、レーザパワー、ライトストラテジ、クーリングが重要なのは言うまでもありません。

 CD-RWの記録の原理を温度的なプロファイルから説明すると、まず、結晶相を一気に融点にまで昇温し、不規則な原子の状態をつくり出します。これがアモルファス状態で、つぎにこの状態を急速に冷却します。理由は、原子の組み替えが十分に起きないように、です。すると、原子はばらばらな状態でフリーズされ、アモルファスになります。これがアモルファス相の記録メカニズムです。

 一方、融点には至らない、やや中間的なレベルにまで昇温しておいて比較的ゆっくり冷えるように温度管理をしてやると、今度、原子には元の状態に組み替わる時間が与えられます。これが結晶相の記録です。

 このように、相変化記録は、基本的にはCD-Rのときと同じように、昇温とクーリングを非常に高度に制御し、それによってアモルファス相を生成していきます。結晶が反射率が高く、非晶の方が低反射率となります。

 


 もっとも、いくら結晶相の反射率が高いとはいえ、CD-RWの反射率は、780nmの波長領域においてはCDやCD-R(65%以上)のそれにはとうてい及ばず、そのため新たにマルチリードという概念が必要になってきました。

 なお、CD-RWの消去はいわゆるワンビーム・ダイレクトオーバーライト方式となっています。相変化材には、“溶融はしないのだけれども結晶化するには十分”という温度があり(=イレースパワーレベル。約200℃)、そのレベルになるよう微弱にレーザを照射して昇温し、それから徐々に冷却することで、アモルファス相は結晶相に戻り、新しい記録が可能な状態となります。