最初にISO 9660(以下この名称を用いることにします)の概要からお話しておきますと、この規格はあくまでプレス型のディスクを前提にしているのだ、ということを知っておかなければなりません。ですから、“プレス前の処理にたっぷり時間をかけてディスクを制作”し、反対に、読み出しはできるだけPCのCPUに負担をかけない構造になっているの点が大きな特徴です。
ISO 9660のファイルの構造は、「ルートディレクトリ→ディレクトリ→ファイル」というようになっていて、ルートからファイルにたどり着くという階層ディレクトリ構造になっている点では、MS-DOSのFATをはじめとした他のファイルシステムに似ていて(下図)、「ボリューム記述子」(VD=Volume Descriptor)と呼ばれる「ファイルシステムに関する記述的情報を含む構造」で管理されています。
一方、ISO 9660はこのディレクトリ構造とは別に、ディスク上のすべてのディレクトリを指し示す独自の検索テーブルを持っています。これを「パステーブル」と言い、このパステーブルはISO 9660というファイルシステムを特徴づけるものです。
なぜこのような特別な検索テーブルを持たなければならないのかというと、CDはその構造上、シークを伴うランダムアクセスのスピードにあまり期待が持てないからで、パステーブルはファイルへの高速読み出しを約束するものなのです。
というのは、ハードディスクやMOなどが「角速度一定読み出し」(CAV=Constant Angular Velocity=ディスクの回転数が一定)方式なのに対し、CDは「線速度一定読み出し」(CLV=Constant Linear Velocity=再生するフレームの長さが時間あたり一定)方式であるためです。
上記で説明しているとおり、CDが採用しているCLVは、記録密度という点ではCAVのそれをはるかに上回っているものの、検索は必ずしも得意ではない。ということであれば何らかの手段でその“苦手”を補う必要があります。それが検索データベースであるISO 9660のパステーブルなのです。
パステーブルは、
- ディスク内の、ルートディレクトリを含むすべてのディレクトリの場所を指し示している。さらに「子ディレクトリ」は「親ディレクトリ」を指すことで(指示のことを「ポインタ」とか指すことを「ポイントとする」という言い方をします)「親子関係」を保持している。
- 検索しやすいようにアルファニューメリック順にソートされている。
- CD-ROMをロードするとメモリ上に展開され、メモリからディスクに対してアクセスするので高速の読み出しが可能。
――という特徴を持っています。パステーブルというのは、目的地への近道をすべて知っているデータベースで、近道を覚え込ませるためには“プレス前の処理にたっぷり時間をかけ”なければなりません。そしていったん覚えてしまえば、たとえ目的地(=ファイル)が多少複雑な場所(=深いディレクトリ)にあっても、一発でたどり着ける(=ファイルを見つけ出すことができる)のです。

|