UDFの歴史と背景……ISO 13490とISO 13346
 マルチセッションの説明で、「この記録方式はわずかなデータを追記するだけでもリードインとリードアウトで最大40MBも消費してしまい、細かい追記には適していない」というお話をしました。

 そこで、少しずつ追記していく方法としてパケットライトを実用化しようとしたものの、ISO 9660はパケットライトには向きません。ROMが前提になっているため、ファイルを一つ加えただけでもディレクトリとパステーブルを更新しソートしなければならないISO 9660のファイルシステムは、パケットライトとして利用するにはオーバーヘッドが大きすぎるのです。では、ハードディスクやフロッピーディスクで使われているFATはどうでしょうか? FATは同じ場所を何度も書き換えられるメディアで使われることを前提としたファイルシステムであるためにやはり使えません。

 実は追記型CD用のファイルシステムの規格は存在します。当初ECMA(=「エクマ」と発音します。ヨーロッパに本部がある、情報・通信分野の標準化団体の名前です。ISO 9660も当初はECMAでECMA-119として規格化されました)でECMA-168として規格化され、その後国際規格になったISO 13490:1995(対応するJISはJIS X 0608-1997 再生専用形及び追記形の情報交換用コンパクトデスク媒体のボリューム及びファイルの構造)がそれです。しかし、ISO 13490は多くの機能を盛り込みすぎたため複雑になってしまい、実際にはほとんど使われていません。

 このECMA-168とほぼ同時期に検討され規格化されたECMA-167という規格はMOやWORMのメディア用のファイルシステムとして作成されました。この規格はISO 13346:1995として国際規格化されています(対応するJISはJIS X 0607-1996 非逐次記録を用いる追記形及び書換形の情報交換媒体のボリューム及びファイルの構造)。同時に検討されたため、二つの規格は一部のパート(Part 2とPart 5)を共有するなど兄弟の関係にある規格であるともいえます。

 ISO 13346はファイルシステムの枠組みを提供していますが、ファイル名の文字コードやファイルの属性などの解釈はメディアを書いた人と読む人との間で約束することになっています。そのような約束を「ドメイン」と呼び、メディアにはそのメディアが従っているドメインの名前が書かれています。UDFはOSTAの決めた一つのドメインで、当初UDFはMOとWORMのためのドメインとして定義されました。

 その後、DVDが登場しました。記憶容量が4.7GBと大きく、書き換え型のメディアもはじめから予定されていたDVDではUDFがファイルシステムとして採用されました。DVDについての約束も書かれたUDFがUDF Ver.1.02(正式にはRevision)です。DVDのフォーマットとしてUDFが採用されたということは、将来の各種OSではUDFが標準的に使えるようになるだろうということを意味しました。現にWindows 98、Mac OS 8.1以降がUDF Ver.1.02のドライバを標準搭載していることはご存じのことと思います。もともとMOやWORM用のファイルシステムとして考えられたISO 13346はパケットライト方式のCD-R/RWにも応用することが可能です。交換可能なメディアがUDFで統一的に扱えるということはOSをつくる側にも、ユーザの側にもメリットがあります。たとえば、ファイルの命名規則が同じになるため、Webコンテンツのような他のファイルの名前がファイルの中に混じってしまっているファイルをバックアップするときも直接コピーすることができるようになります。

 このためUDFをCD-R/RWのパケットライトのフォーマットとして使うことが検討されました。しかし、CD-RとWORM、CD-RWとMOではメディアの特性が異なるため、そのまま使用することはできませんでした。そこでUDFを拡張してCD-R/RWでも使えるようにしたものが1997年2月に公開されたUDF Ver.1.5です。現在、最新のUDFはVer.2.0となっており、Windows NT等のファイル属性も記録できるようになっています。

UDFの歴史